| たつまきの起こすミステリー | |
| 藤田スケールの中に「ミステリー」という言葉が出てきますが、藤田博士の残された「たつまき -渦の驚異-」という本には、「たつまきの残したミステリー」という項目で、不思議なお話が記録されています。ここでは、その中から、いくつかご紹介します。 | |
| 気がついたら屋根がなく星空が見えた | |
たつまきの被害地を飛行機やヘリコプターで調べるとき、壁は無キズなのに、屋根を文字通りはぎとられている家を見かける。その数はかなり多く、ときには1つの町に5軒も10軒もある。写真は1965年4月11日のたつまき直後、ウィスコンシン州のモンロー市の町外れで写したものである。たつまきの大きさ、進行速度から計算してみると、屋根は10秒か15秒のうちに飛んでしまったことになる。しかも、そのはぎとり方が、じつにあざやかで、壁は健在、大部分の窓ガラスまでのこっていた。もちろん、屋根が飛ばなかったら、部屋の空気に押されて、窓ガラスの方が飛び散ったはずである。日づけは覚えていないが、オクラホマ州の田舎でおこった話。すきま風を感じて夜中にふと目をさましたら、頭上に星が輝いていた。よほど静かに屋根を取り去ったのか、または老夫婦の耳が遠かったのか? それともその両方であったのか知らないが、ビックリしながらも、助かったことをよろこんだにちがいない。 |
|
| 1200メートルも宙を飛んだ16トンのタンク | |
飛ばされたのは軍用タンクではなく、液体肥料を入れるためのタンク。私がラバックで撮った写真がそれで、右側から転がってきて、工場のフェンスを押し倒したところでストップしている。16トンの重みで、とつぜん地面に押しつけられ、もう立ち上がる元気を失った潅木や雑草が変色し、そこには整地用のローラーで作ったような道ができていた。飛行機の高度をグッと下げて、その道を点検する。空カン、トタン板、板切れ、タイヤ、びん、電線、オモチャ、本、机の足、植木鉢など、書き上げればきりがない。よくもこんなにいろいろなものを集めて押しつぶしたものだ。つぶされてできた道の長さは200メートル。その終点には、もうテコでも動かなくなったタンクが居すわり、始点には赤土の底が露出している真新しい穴があった。それは、タンクが地面に激突したときできたものに間違いない。 つぎの問題は、そのタンクの飛び立った場所、つまり、タンクの本籍地をつきとめることだが、飛行機の燃料がすくなくなったので、いったん飛行場に着陸し、給油中に案をねった。結局その後、私は空から、友達のシャナハン氏は地上からと、文字通り空陸一体となってさがしまわること2時間余り、思いがけぬ場所に5本の支柱が、思い思いの方向を向いて散らばっているのを発見した。激突した穴と支柱までの距離は、なんと1200メートル。そのあいだには、直径300メートルの池、清涼飲料水の工場、それに4車線で中央分離帯のあるハイウェーがあった。 タンクの本籍地はどうやらわかったが、どうした風の吹きまわしで、タンクが1200メートルもひととびしたのか? その理由がまだ分かっていない。最近聞くところによると、タンクは後日誰かが買いとって、ペンキを塗り直し、いまでは町のどこかで昔と同じ役目を果たしているとのこと。 |
|
| 消えて出てきた1400ドル入りのズボン | |
| お金を吹き飛ばしたり、またはかくしたりするつもりは毛頭ないのに、たつまきがその罪を負わされる顛末になることが、あとを断たない。ドル札には、所有者の名前が入ってるわけがないので、いったんさらわれてしまったら、それが最後。小額ならばお金のことは忘れるが、額が大きければ泣き寝入りしてしまう。 95ドル入りのズボンを飛ばされてしまったのは、1925年の3月18日。そのたつまきはアメリカ史上の横綱で、ミゾーリ、イリノイ、オハイオの3州にまたがる350キロを時速100キロで突っ走り、死者792人を出して大暴れ。その大たつまきのあとかたづけでごった返しているとき、あきらめていたズボンが、突然、お金ごと本人の手にもどってきてビックリ。それがまた63キロも離れたところに落ちていたと聞いて仰天。 それから23年後の1948年5月1日、こんどは1400ドルもの大金入りのズボンが消えて、金額の上では新記録となった。その主人公は、キャンサス州の農夫で、農場を売った金の一部のはいったズボンをはきかえた途端にたつまき警報。あわてて奥さんとともに地下室に飛び込む。その直後にたつまきが農場の上を通過し、外にいた家畜はやられ、家は大被害を受けた。かすり傷ひとつ負わず、地下室からはい出てきた二人は、せっせと家のとりかたづけ。やがて、例の大金入りズボンがなくなっているのに気がついた。 数日後、思いがけないところから引きずりだした泥まみれの布切れが1400ドルの現金の入ったズボンと知って、おどろくやら、うれしいやら。そこは農場近くのほら穴で、中から出るわ出るわ。ブタの死体、こわれたポンプに洗濯機、それはたつまきが運んできて、片っ端からつめ込んだものだった。 たつまきで家が全壊し、現金が消えてなくなることは決してめずらしくない。その場合、消えたお札が持ち主にもどらぬことが多い。それでは話のネタにはならないらしい。 |
|